牛伝染性リンパ腫の発症牛

牛伝染性リンパ腫の発症牛

「餌を食べない」との凛告で往診依頼。

生後19ヵ月齢の去勢の肥育牛で、重度削痩、同居牛と比べて著しく発育遅延。

パッと見た感じは、慢性肺炎を疑いました。

診察して見ると、体温は平熱、聴診により肺音(-)、皮温および胃動が低下しているくらいで特に異常音は取れませんでした。

次に視診および触診により、左右頸静脈の怒張、左右の腸骨下のリンパ節が腫脹を確認。

また、便性状を確認しようとしたら、暗黒色の兎糞便(コロコロした兎の糞のような便を言います。)を少量排泄。

少し糞づまりのような怒責を繰り返します。

直腸周辺に腫瘤があって糞詰まり状態になっているのでは?と思い、すぐに直腸検査をしましたが、腹腔内に腫瘤等は確認出来ませんでした。

総合的に判断し、
・牛伝染性リンパ腫(牛白血病)
・全身性の化膿性疾患
・重度肝疾患
などを疑いました。

左右のリンパ節は多少腫れていましたが、直検にて腫瘍が確認できなかったため、五分五分くらいの思いで家畜保健所に病性鑑定を依頼しました。

すると結果は、白血球数10万/μl、異型リンパ率100%のバリバリの発症牛でした。

私が大学の頃、今から20年以上前になりますが、3歳以上の老齢牛でしか牛伝染性リンパ腫は発症しないと教わりました。

しかし、今は生後15ヵ月齢未満での発症例も散発しています。

最近では家畜共済でも補償するようになりましたし、子牛市場によっては素牛代金を返金してくれるところも増えてきています。

しかし、「牛伝染性リンパ腫」という診断をできなければ、補償は受けられません。

もしかして…と思ったら、獣医師に検査を依頼することをお勧めします。