哺乳期の食道梗塞 … !!!

哺乳期の食道梗塞 … !!!

一般的にハッチの敷料は、おが屑(ノコクズ)が多いと思います。私の農場でも哺乳や育成、肥育も含め、すべての期間で敷料は、おが屑を使用しています。

この「おが屑」が、ときに脅威となり得るのです。

生後1週間の仔牛です。

飲んだ物をすべて嘔吐します。

糞便には、大量の「おが屑」が混じっています。

個体によっては、敷き量である「おが屑」や「もみ殻」を食べて咽頭部や食道に詰まることが稀ですがあります。

すぐに「おが屑」のないハッチに移し、口から色々な大きさのカテーテルを通そうとしますが、入りません。

仕方ないので、経鼻から尿道カテーテルを押し込むと、「スッ」と通った感触が あったのですが、第1胃までカテーテルが入りません。

たぶん、喉頭蓋(のど)付近のおが屑は取れたのですが、食道から胃に繋がる噴門部あたりで「おが屑」が詰まっていると思われます。

もちろん、レントゲンで撮影し梗塞部位を確定、内視鏡を用いて取り除くのがベストでしょうが、現場にはありません。

再度、カテーテルを通したり、胃洗浄も試みましたが、仔牛が苦しがるだけで、びくともしません。

仕方ないので、パドリニウム注(臭化プリフィニウム)を投与し、翌日再診することに。

翌日の早朝、車の中で、治ってなかったらカテーテルを入るところまで挿入し針金でほじろうか、などと緊張していたら・・・。

無事に通ってました。

すごいぞパドリニウム注。

もちろん、現在も便の中には、おが屑が混ざるそうですが、元気に哺乳しているみたいです。

パドリニウム注の成分は、臭化プリフィニウムで、普段は仔牛の仙痛(腹痛)などに鎮痙剤として使用します。

作用機序としては、平滑筋を弛緩させます。主に食道の筋肉は平滑筋で作られています。よって、パドリニウムを投与したことで、食道が弛緩し異物を胃へと通過させたと考えられます。

以前は、同じ成分を含むパドリン注を使用していましたが廃盤となりました。

最近になり、リケンベッツファーマさんが再販してくれるようになりました。パドリニウム注は、仙痛以外にも採卵の際にも使用される大切な薬です。

ありがとうリケンさん、仔牛を助けることが出来ました。