佐々畜産では、個体識別番号とは別に、農場の個体番号を導入時に装着しています。
その表記の意味としては、「導入月と導入順」であり、例えば「8-3」であれば、8月の競りで3番目に導入した個体ということを表しています。
昨日の南港出荷牛の写真ですが、「12-13」となっていますので、最後の方に競った個体だと推測することが出来ます。
実は、この牛には「思い出深いストーリー」がありました。
忘れもしない一昨年の12月の熊本家畜2日目、本当に最後の最後の方の競り落とした牛でした。
表現型も抜群で「福之姫-安福久-勝忠平」だったので、12頭の導入予定も取り終えていましたが、余分であってもどうしても欲しい牛でした。
僕がそこまで思う牛は、これまでほとんどいません。
そして、その牛の競り順を待っている時に、ふと周りを見渡すと、熊本でも有名な「N田」さんが座っているではないですか。
N田さんというのは、その日のトップクラスの牛を数頭取って、普段ならすぐに帰ってしまいます。
私が狙っていた牛は、彼が取る牛にしては少し小さいので、「まさかこの牛ではないよなー」と思いながら残りの牛を見まわしましたが、N田さんが取りそうな牛は他にいません。
間違いないと確信したと同時に、絶望にさいなまれたのを、今でもハッキリと覚えています。
結果と言えば、…「109万円(税抜)。」
正直、頭がくらくらしました。
さらに、N田さんは、私が担当している農場でもありますので、診療の度に、この牛のことを聞かれます。
「先生、あの牛は順調に育っているかい、あの福之姫は良い牛だったばい(笑)」
かなり欲しかったのだと思います。
実は、肥育農家というのは、取れずに悔しくて頭から離れない牛というがいます。
たまに夢にも出てきます。
今回の牛は、野田さんの分も含めて管理しなければという思いもありました。
枝肉販売では、「169万円(税抜)。」でした、農場の収支で言えば、トントンくらいです。
枝肉価格が伸び悩む中、なんとか損せずに売れたという感じです。
私の農場に来てくれたことを感謝しつつ、また新たな出会いを求めて、競りに行きたいと思います。