先日、夜間に未経産牛のお産がありました。
初産のお産というのは、経産牛と比べてとても緊張感があります。
なぜなら、骨格などが成長の過程であり、体高が低く骨盤腔も狭いのです。
さらに、分娩自体も牛にとっても初めてなので、陣痛に合わせた怒責(イキミ)などが上手に出来ない個体も多く、助産が必要なケースが多発します。
実際に、難産介助の依頼を受けるのも、圧倒的に未経産牛が多いです。
よって、多くの農家さんにとって初産におけるお産のリスクも心配事の一つと思いますが、初産の牛ではもう一つ緊張する瞬間があります。
それは分娩直後です。産んだ後に仔牛を「自分の子」として認識し世話をするかどうかで、その後の判断が分かれるからです。
個体によっては、自分の仔牛を攻撃したり、踏みつける牛もいます。
初産の時点で、その母牛の産後の特徴が分かりません。逆に子への愛情が強すぎて「人」に攻撃してくる可能性もあるのです。
特に分娩直後といのは、牛も興奮状態ですので、助産後に牛を離す時が一番緊張感を持つ必要があります。
娩出後の手順としては、先ず助産の道具などを片付けて、自分以外のすべての人を外に出します。その後、仔牛を踏みつけないように注意しながら仔牛の方向へ誘導し母牛を離します。
その後、仔牛を舐めるのか?仔牛を「自分の子」として認識するのかを確認します。
もし、仔牛を攻撃するようならば直ちに親から離しましょう。
次に仔牛を認識し匂いを嗅いだりするが、舐めない個体のケースです。
そんな時は、少し暗くし、牛から離れ静かな状況を作ります。特に未経産の個体では、人が観ていると舐めないことが多いです。
もし、時間を空けても舐めない時は、仔牛の体に配合飼料をかけてあげると良い場合もあります。
今回の母牛は無事に舐めてくれました。
早期母子分離(人工哺育)の農場ならば親が世話しなくても良いのですが、私の農場のような自然哺育(親付け)の場合は、世話しない場合は、その後の哺育期の管理にとても手間がかかってしまいます。
未経産の分娩後のこの緊張感というのは何とも言えないものがあります。