今日、今年の6月10日産まれの雄の子牛が死亡しました。
生後4ヵ月齢と17日だったのですが、治療してない日の方が少ないような生涯でした。
彼は、先天性の喉頭蓋(喉の部分にあり、嚥下時に気管に蓋をする役目)の奇形で産まれ、毎回ミルクを飲むと咳込み、休み休み哺乳していました。
哺乳瓶の乳首を交換したり、バケツ哺乳を試したりしましたが駄目で、誤嚥を繰り返し誤嚥性の肺炎を発症。
しかし、誤嚥しながらも必死にミルクを飲んでいました。
ところが、生後3ヵ月齢前後で今度は原因不明の尿道破裂を起こし尿閉に陥り・・・。
どうするか悩みましたが、尿道バイパス手術を実施。
肉用牛専門の獣医師になって17年ですが、こんな若齢で尿道バイパス手術をしたのは初めての経験です。
深水先生にもサポートして貰い、何とか無事に手術は終えました。
術後すぐの映像ですが、下腹部が膨満しているのが分かると思います。
その後も、無事に排尿しながら、なんとか哺乳していたのですが、化膿性の膀胱炎、腎炎を発症し腎不全へと移行し、今日逝きました。
私としては、肥育牛としての価値はなくても、肉になるまでは頑張りたかったのですが力不足で叶いませんでした。
悲しくて残念ですが「後悔」はありません。
これは、往診していると感じる事ですが、とても熱心な農家さんほど、この「牛との別れ」にショックを受けるようです。
人によっては考え込んでしまい寝込む方もいます。
しかし、この「別れ」は、生き物を扱う生産現場では避けて通れないことです。
地域によっては、なかなか獣医師を呼べない所もあります。
自分が置かれてる環境や条件の中で出来る限りの事をやってあげれば良いと思います。
牛が死ぬ事は残念ですが、「後悔」する必要はありません。
彼の場合も、スタッフを始め私なりに出来る限りのことをしたと思いますし、彼もそれに答えるように必死に生きました。
そして「彼」から、私もスタッフも深水先生もたくさんの事を学びました。
だから「後悔」はありませんし、学んだ事を活かし前に進むことにします。
牛との別れに納得が行かず、後悔している人はこのページを見て安心して下さい。
肉用牛専門で往診しながら、お金を頂きコンサルしている「獣医師が牛を飼っても死なせる」のですから。