10月の半ばから、持病である「ぎっくり腰」を3回も繰り返し、往診からしばらく離れており、農家さんも含めて皆様にも多大なるご迷惑をおかけしました。
また、それにともない、日々のニュースの投稿頻度も減り申し訳ありませんでした。
現場復帰をして間もない、昨日(日曜日)の朝です。
肥育後期の去勢牛が調子が悪いとのことでの往診依頼。
いざ、農場に到着すると、ビックリするぐらいの重症牛ではないですか!?
診察をする前に、すぐに病畜の緊急屠畜を確保してもらうようにお願いしました。
農家さんは気づいていなかったように、パッと見では、そんなにヤバい状況には見えないのです。
頭部下垂の努力性呼吸、さらに流涎、一部開口呼吸を認め、歩様もヨロヨロしています。
呼吸器病の末期症状です。
同居牛と比べると痩せているのに加え、肩が開いているので、慢性肺炎の再発を疑いました。
いざ捕まえて聴診して診ると、肺音がほとんど聞こえません。
「え、正常な肺で、肺炎ではないのか?」と勘違いしそうな程です。
しかし、肥育を診ている獣医師は分かると思うのですが、肺炎末期のとても危ない「無気肺」の状況なのです。
通常の肺呼吸では、肺胞の中に空気が入り膨らむことでガス交換し酸素を取り入れてます。無気肺とは、肺の一部又は全域で何らかの原因で肺胞の中に空気が入れず潰れており、ガス交換が出来ない状態を言います。
無気肺になると、患畜はチアノーゼに陥り、重度の場合は、呼吸不全で死んでしまいます。肥育農場では、慢性肺炎の末期で多くみられます。
今回の症例では、肺音がほとんど無い代わりに、「コポコポ」と水中にいるような音が微かに聞こえます。
多分、肺炎の他に胸膜炎も併発し胸水も貯まっていることが推測されました。
さらに、直検してみると、宿便は殆どありません。2~3日前からなにも食べておらず、持続起立していたのかもしれません。
すぐに緊急出荷したいところですが、日曜日ということもあり、翌日まで待つことに…。
一応、呼吸不全の改善のために、輸液療法を試みましたが、残念ながら同日死亡となりました。
たぶん、動画を見た多くの人は、大したこと無いように見えると思います。
この鼻をヒクヒクさせる「鼻翼呼吸」および少し口が開く「開口呼吸」には、要注意です。